MubaoMasato

ミッシングのMubaoMasatoのレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
5.0
「missing」
凄いものを観たわ。吉田監督は監督は素晴らしいのは勿論のこと、何より脚本が唯一無二というか、考えさせるが自分が考える人間の本性をとことん突き詰めている。どこかを欠落して、永遠に罪を背負っている。でも、どこかに一瞬の光が差してくる。

娘が失踪して、三ヶ月が経ち、有力な情報が集まらず、集まるのは誹謗中傷だった。そして、メディアは夫婦達に密着するが、変わり映えのない映像で、商業的には芳しくなかった。娘は帰ってくるのか、数々の線が色んな形に変わる。

やはり、石原さとみさんですよ。ドラマでは数々の金字塔を建てましたが、遂に映画でもデカイ金字塔が建ちました。娘を失って、ヒステリックと悪口を見ないとやってられないことや一種の光を求めている形が凄すぎました。悪口は多分彼女にとってのタバコのような感覚なんでしょう。でも、夫婦は依存で逃げておらず、きちんと現実に向き合いながら、娘を探している。体に悪いものは人間は求めているんだなと思います。

そして、夫が僕はずっと共感してしまいました。もしかしたら、僕が男だから、夫に共感しているのかもしれません。普段は娘のことを心配しているようには見えないが、きちんと信憑性のある情報の取捨選択と妻の気持ちを大事にしていたり、妻には見せないが、子供を見ると涙を流したり、チラシを必ず持ったり、毎週ビラ配りをしている。娘が帰ることを必ず信じている。他に何言われても無視。親とは何なのかと考えたとき、この夫を出すでしょう。

そして、メディアの中村倫也さんですよ。きちんとした正義を持っていますが、他人の出世や商業主義にまみれた世界には、全く向いていません。その中でも、特に印象深いのは、政治家の風俗での性の遊びを話しているときに、「悪いことした人だけど、そこまで叩くことかな。」と言った時に、この人は間違いは叱るけど、他のことには寛容である。性的嗜好は人それぞれなので、相手が嫌がることなら、辞めた方が良いですが、了承してくれているなら、悪いことではないと思います。

そこから、どんどん妻の弟が犯人なのではという憶測や弟にも何かの背景があるのでは。娘と似たような失踪事件が起きて、夫婦は徐々に変わりつつある場面は、特に凄かった。いろんな感情に揺れ動かされながら、映画館を後にしてください。
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