yuzame

ミッシングのyuzameのレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
3.0
子供を失くすという
人に起こる不幸の中でも
トップクラスの悲劇に見舞われた主人公。
見ている観客は、主人公に同情したいし、
心を寄せたいと思っているのに、
序盤は全然そうさせてくれない。

見苦しいし、うるさいし、支離滅裂だし、
無礼だし、全く周りが見えてない人物。
これほど気の毒な身の上なのに、
同情を誘わないなんて、全くお見事。
素晴らしい演技。

触るもの皆傷つけて、
さらに自分も傷つけて
空回りなのに
ガッチャンガッチャン不協和音を
立てながら転げ回っている主人公。

剥き出しの不幸。
生々し過ぎて
簡単には手を差し伸べられない
見なかった事にしたくなる程の不幸。

やり過ぎなくらいに
振り切った演技をしている
石原さとみとは対照的に、
青木崇高や、中村倫也を始めとした
周りのキャストは
極めて抑制した演技。
このコントラストで
さらに主人公が異様な人物に見えてくる。

地方テレビ局のキー局コンプレックスは、
クライマーズ・ハイで描かれた
地方紙のそれと重なった。
(そういえば石原さとみ
クライマーズ・ハイ出てたなぁ)

スクープをモノにした後輩のレポートが
映画化されるなんていうのは、
五百旗頭さんや、東海テレビの作品が
元ネタかなーなんて。

「この人はこういう人」みたいな
物語上の役割分担をさせられた
キャラクター達を使って
話を進めるのではなく、
主人公はもちろん、その弟、旦那
テレビディレクターなどの主要人物から、
弟の同僚、担当の刑事など脇の人物までも
多面的で流動的な人間に描いてある
凄く良くできた脚本だった。

ホテルのレストランで耐えきれずに
口を塞いで大声を出す主人公。
子供が見つかって良かったと言える妻に
「お前、凄いな」と漏らす旦那。
怪しいと思った家を覗きに行って
通報される弟。

人物を描写していく際の
エピソードのチョイスの妙、
ディテールの鋭さが凄まじいなと思った。

警察署の帰り、不意に車を停めて謝る弟。
お前ふざけんなよと言いながらも
2人で号泣するシーンは凄かった。
同じ悲しみを抱える者同士が
本当に悲しいね、辛いねって慰め合う。
んでそこにかつての
推しの曲が流れ始めるっていう。
なんて性格の悪い脚本なんだw
yuzame

yuzame