さるやん

ミッシングのさるやんのレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
4.5
こんにちは、さるやんです。

いつもは見た順にレビューを挙げておりますが、今回は特別に一足先に繰り上げさせてもらいました。

観終わったあとに、天井を見上げながら深くため息を二度ほど吐いてしまいました。

そんな作品です。

吉田恵輔監督、コノヤローなんて作品を作ったんだ。

ハッキリいうと5月下旬暫定一位です。

これほどまでの演出力、脚本力、そして、主演の二人いや三人いや四人の見事な演技力

邦画ってダメダメな作品もかなり多いと思いますが、"ある男"のように突如、ハリウッドも全インドもかなわないような
大化けする作品がでてくることありますよね。
まさに今作がそんな作品です。

主な登場人物は4人

娘が失踪して3ヶ月になる母親·沙織里(石原さとみ)
娘の失踪時にある場所に出かけていたことで必要以上に自分を責めています。

同じく父親·豊(青木崇高)
沙緒里の過剰なまでの努力に疲れながらもなんとか妻を支えようとしています。

沙織里の弟·圭吾(森 優作)
美羽(失踪した沙織里の娘)が失踪前、最後にいた人物

砂田(中村倫也)TV局の記者 美羽の親に同情しながらも局との報道姿勢の狭間に揺れている。

この四人がそれぞれの視点に移り変わりながら物語は進んでいきます。

日々ビラ配りで美羽ちゃんを探す沙緒里、明らかに疲労困憊しているのがわかるのに、異常なエネルギッシュさの演技。昔はダイコンと言われてましたが、アンナチュラルあたりから異様な目の演技を見せ始め今作では顔の表情、震える声、舌打ち、恫喝、哀願など迫真いや、鬼気迫る演技を石原さとみさんはこなしております。舞台が沼津だけに、千葉の元ヤンママにしか見えません。この演技だけでも見る価値はあると思います。

また今一番脂が乗っており韓国映画などにも出演されている青木崇高さん。
奥さんの支離滅裂とも言える言動にもなんとかなだめたりときには激しく言い合ったりこの夫婦のやりとりもリアルに見えました。
特にすごかったのはほんとにラストでの演技ですね。

そして、あまり知られてはいませんが邦画でたまに見かける森優作さん。
今作品においてジョーカーとも言える役で物語の方向性を上下左右に混乱する役をになっております。
ただし、役的には普通に生きたいのにこれまたあることが原因で大きなキズをかかえており、そのことでさらに泥沼にはまり込むことになります。
この映画で、彼は和製ポール・ダノに大きく一歩前進したことと思います。

そして、報道の真実と本音、大人の事情の間に揺れ動く中村倫也さんも自らの信念故に追い詰められていきます。

誰もが加害者ではないのに、むしろ被害者なのにどんどんと追い詰められていくさまが見ていてとても苦しいのですが、その隙間にふとした思いもかけない優しさをみせてくれる思いやりがあるので多少なりとも救われる場面も。

また本筋と関係ないところで諍いやイザコザが映し出される様があまりにもリアルだったりします。

吉田恵輔過去作も、社会の何気ない悪意の積み重なりを描いてきましたが、今作でかなりの完成を見せてるように感じました。

演出、脚本、演技、音楽、撮影とどれも素晴らしいものでありながら深い絶望の淵に一筋の光を探してもがく人々の生き様をみごとに映し出した作品ですので是非多くの方にご覧になっていただきたいと思います。

ちなみに石原さとみさん、次の日本アカデミー賞主演女優賞賞確定といってもいいのではないでしょうか。
さるやん

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