鹿苑寺と慈照寺

ミッシングの鹿苑寺と慈照寺のレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
4.5
幼女失踪事件を取り巻く娘の両親、母親の弟、事件を追うテレビマンたちの人間ドラマ。エンタメ作品ではなく、あくまで社会派であることを追求した、心を抉ってくる作品。

子供の失踪事件はこれまで数多く発生している。悲しいことに遺体として発見されることも多いし、数10年経っても未解決の事件もある。本作は安易な感動エンタメにすることなく(監督のこれまでの作風からして絶対にそうはならない)、現実を直視した社会派作品としての覚悟と矜恃を至るところに感じたし、他人に対する安易な偏見や印象で特定の誰かを犯人として決めつけるような登場人物を物語から自然と退場させるところに「見つかって欲しい」という希望も感じることができた。

石原さとみさんや中村倫也さんの演技が素晴らしいのは言うまでもないけれど、特に青木崇高さんがとてつもないほど素晴らしかった。感情に走りやすい沙織里(石原さとみ)に対してできる限り冷静でいようとする豊(青木崇高)が目を充血させながらも涙は流さずぐっと堪えながらたばこを吸うシーンの表情が素晴らしすぎた。そんな豊が今まで溜めていた感情を吐き出すように泣き出すシーンが切なかった。豊の人物設定もとても良くて、「俺は馬鹿だから」と言いつつも、遠方に娘がいるとの誤情報に振り回されたときもちゃんとビラを持ってきているところやネットの誹謗中傷に対して弁護士に相談するところなどのしっかり周りが見えていて、かつ娘や沙織里のことを誰よりも思いやっているところがとても良かった。

鑑賞後は何とも言えない気持ちになるけれど、見て良かったと思える作品だった。

1点だけ気になったシーン。砂田と圭吾がそれぞれガラス越しに何かを訴えかけるシーン。2人とも声は入っていないが、非常に印象的に描かれていた。このシーンがとても気になったし、何か特別な意味合いがあるんだろうけど、僕は汲み取ることができなかった。

以下は個人的なメモ
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青木崇高さんの涙を堪えながら(目は充血している)たばこを吸うシーン。素晴らしすぎる。

豊がずっと献身的に沙織里を支えているのが良い。遠方でもちゃんとビラを持ってきているところ、SNSで誹謗中傷している人に対処しているところ。

圭吾と砂田のガラス越しの叫び。

刑事の車が中古車に買い替えられている。あの一瞬のシーンはなんで入っていたんだろう。

「事実が面白いんだよ」

幼女の失踪の真実ではなく、ゴシップや事件を面白がる人たち(不破や三谷)が物語から退場していく。
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