顔面土砂崩れ

ミッシングの顔面土砂崩れのネタバレレビュー・内容・結末

ミッシング(2024年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

あまりにも全体を通して辛い、救いのない2時間だった。
主要な登場人物それぞれは何も悪くないし、非難されるような事はないのだけど。
不特定多数の野次馬たちや悪意のある第三者のちょっとした心ない言葉、行動で石原さとみを始めとした主要な登場人物たちの心が壊れていくのが、終始見てられなかった。

マスメディアが数字と結果を追い求めた結果、真実を追い求めるというジャーナリズムではなく面白おかしい大衆が楽しめるエンタメとしての事実を探そうとしてしまうという構造上の欠陥を鮮烈に描いていて、中村倫也演じるテレビマンはこれに抗おうとするのだが、上司からの「面白おかしい真実を撮ってくるように」という命令に従うかない、勤め人としての葛藤とジャーナリストとしての矛盾に揺れ動き心が壊れていくのも見てられないし。
テレビに出ることによって様々な誹謗中傷をネットでされ、それに心を荒ませていくが、愛する娘の情報を少しでも手に入れたい一心でマスメディアの数字を取るための演出に縋るしかなくて、必死になる石原さとみ、そんな彼女をおかしいと思いながらも旦那として父として協力するしかない青木崇高。
自分が目を離したせいで姪を失ってしまった、石原さとみの弟の圭吾、誰も悪くないんだけど。それぞれの感情がぶつかり合って傷ついていく様は見ていられなかった。

マジで好きなシーン上げたらきりない。
石原さとみが唇を震わせながら発狂するシーン。娘が見つかったと思って警察署に行ったらそれがイタズラ電話で笑いながら石原さとみが失禁するシーン。掲示板に貼られた娘を探すビラの顔写真の目の部分に画鋲が差し込まれていて商店街で発狂してしまうシーン。ガラス越しに上司に何か悪態をつく目がバキバキの中村倫也。最後の最後、思わず感情が溢れてしまって男泣きをしてしまう青木崇高。ずっとどこか他人事のような態度でいたけど自責の念を抱えてた圭吾が昔の幸せだった頃の動画を見て泣いてしまうシーン。

この映画はどこをとっても名シーンの連続で、しっかりと2時間、余裕を持って見るべき映画。
石原さとみと青木崇高の娘が生きてるのか死んでるのかさえ分からないまま終わってしまうラストと2年という時の中で、周りの人たちの心から娘が忘れ去られていってしまう、それでも母と父は娘の幻影と、生きているかもしれないという、ほんの僅かしかない希望を持ちながらこれからも過ごしていくのだと思うとキツ過ぎる。

マジで辛すぎて泣いてしまいそうになったし、絶対子供が生まれてからは見れない映画だと思った。