「あのとき、ああしていたら」という人生の分岐点で違う方向にすすんだらどうなっていたか?そんなifの世界4つを並行的に描いていく演出が特徴のヒューマンドラマ。
明らかに最も幸せそうに見える人生が急にどん底へと陥ったり、その逆に絶望からスタートする人生にこそ救いがあったりと、幸せの定義なんて一筋縄ではいかないことが端的に伝わってくる。
正直なところ主人公は最初からかなり恵まれているので(明らかに可哀想な一つの人生を除いては)ないものねだりが過ぎるきらいを感じて最初の方はあまり乗れなかった。
しかし、物語の畳み方からわかりやすく伝わってくるのは「どのルートだとしても幸せを感じられるかは自分の心持ち次第」といったメッセージ。これぞ、上記した私の難癖に対しての真っ直ぐとしたアンサーであり、ケチをつけてごめんなさいという気持ちになる。
白眉なのは「今観ているのはどのルートの人生なのか?」観客が迷子にならない語り口。髪型や衣装も含めた細かな工夫はもちろんなのだが、なによりも4つのジュリアを微妙に演じ分けたルー・ドゥ・ラージュが素晴らしかったんだと思う。
少し複雑な設定ながら説明過多でにはなっていないことで適度な緊張感がうまれ観客は物語に集中する。そうしているうちにポジティブなメッセージが自然と染み渡ってくる。ストーリーテリングに優れた素敵な作品だったと思います。