Kuuta

STILL:マイケル・J・フォックス ストーリーのKuutaのレビュー・感想・評価

4.0
Still 静止
走り出したら止まれない子供だった。いじめから走って逃げた小柄な少年が、成功を掴む。パーキンソン病を患いながら、それを隠して演じ続けた日々、告白後の生活を描くドキュメンタリー。

スラップスティックコメディの当代きっての担い手として、泣き笑いの感情を演じる喜劇役者として、素晴らしい成功を収めながら、今は病気の影響で意図せず道路で転んでしまう。なんという因果だろう。

特徴的なのは、現在のマイケルが再現ドラマを演じるのが難しいこともあるのだろうが、過去の出来事や会話を、彼の出演作の切り抜き、マッシュアップした映像で表現している点だ。何者かを演じ、現実から逃げるように走り続けた。彼の人生がそのまま映画になった、という今作のテーマを編集の力で描いている。

キャリア後半から瞬きが減り、表情が抑えめになったこと。薬が切れる時間を計算しながら演じていたこと。左手の震えを隠すために小道具を持って会話していたこと。数々のシーンが、彼の苦悩と努力を物語る。

病気を告白し、症状をジョークや役柄に取り込んで演じるようになった後年の姿。映画に加え、子供の誕生など、実生活の風景が入り込んでくる。映画も、家族の支えも、リハビリや静かな暮らしも、マイケルを形作る「今の映像」が表現されている。周囲にゆっくり進めと言われ、走れもしないのに急ぐ姿は俺たちの知っているマイケルそのものだった。走るシーンを切り抜いた畳みかけ、そりゃ泣くよ。。
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