きゅうげん

首のきゅうげんのネタバレレビュー・内容・結末

(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

北野武監督最新作は、ブラックユーモアありラブロマンスありアクロバットアクションありの超エンターテイメント時代劇!


ポスト織田政権をめぐる明智派・羽柴派・徳川派の陰謀劇に、抜け忍一味の珍道中が群像劇的に絡み合う戦国絵巻物で、戦国大名たちのポリティカル・サスペンスを荒唐無稽な忍者バトルで彩っています。

そして全員悪人なのはもちろん、狂人の信長や真面目一徹な光秀、色ボケの村重に抜け忍の芸人連まで、「みんなあほ」なのが重要です。
原作小説では上方落語の祖とされる曽呂利新左衛門によるイントロダクションがついており、彼の語りという形式の物語構造をとっています。
“道化師こそ真人間”というモチーフはシェイクスピアの昔からあり、愚者とされるものこそが最も客観的・俯瞰的・良識的で、ストーリーテリングをするに足る存在である、というのは至極真っ当なと言えるでしょう。
一見して狡猾で老獪な秀吉や家康すらも、どこか愚かしく相対化した作劇になっており、ビートたけしのエンターテイメント観を垣間見た気がします。


生首切断バイオレンスとかシュールでオフビートなギャグとか、“侍になりたい男”茂助の黒澤明作品感とか、大河以上に豪華絢爛な武将装束とか、もう観たいもの満載で満腹満足!
……ただ「ビートたけしが天下をとる」物語であるからには、ポスターのようにたけし御本人が玉座でふんぞり返るエンドだと思ってたんですけど……、ないものねだりですが残念!