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首のAのレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
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たけしの作品を観るたびにたけし自身のことが不思議になるのであった。
これまでの作品でも「ホモソーシャルの中に潜むホモセクシュアルな欲望/まなざし」に自覚的なんだろうと思っていたけれど、今作はもろにそれをやっているような感じ。しかも取り繕って「かっこよさ」やロマンティシズムとして描くことをせず、秀吉の乾いた視線を通すことですべてをばかにしているようですらある(ただしここでばかにしているのは同性愛についてではないのは重要だと思う)。秀吉の乾いた視線と能を見ているときの信長の台詞が物語の核なんだろうな〜と思ったのでした。

さんざん「首」にこだわる人々を見せたあとに「首」なんてどうでもいいと言い捨てる秀吉の言葉で終わることで、ホモソーシャルや戦国時代の動乱のすべてをばかばかしいと切り捨てる。荒川良々演じる清水の儀式がかった切腹に飽き飽きしてる秀吉というのも、「陶酔」へのさめた視線だった。観客がうっとりした気持ちになることを阻害している……というほど押し付けがましいものではなく、自然と「あ、そうじゃないな」とクールダウンさせてくれる。

曽呂利の特技が話芸で、しかもそれを芸人の役者同士でやる(話芸で笑わせることができたらお前を認めてやる、という)というのが芸人のホモソーシャルの暗喩にも見えて、たけしという人がそれをやっているのがやっぱりすごく不思議だった。アマレス兄弟が大活躍でうれしいですよ。

アクの強い登場人物の中でストレートにかっこいい桐谷健太の半蔵に夢中。
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