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夜明けのすべてのAのネタバレレビュー・内容・結末

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

予告で観ようと思った作品。いい映画だった。そして旧作5作1,000円でレンタルして見ていた「あのころの邦画」の質感でもあったことがうれしいしわたしにとっての希望だと思った。細かいところで突っ込みどころはあるかもしれないけど……。ふたりが恋愛に回収されないことのうれしさ。渋川清彦の芝居に涙。エンドクレジットでふたりが同時にクレジットされていてそういう映画だよねと頷いた。



追記📝
藤沢さんと山添くんの距離が縮まっていくことに対して、ふたりの同僚も山添くんの恋人も、誰も異性愛規範の妙な勘ぐりをしないことが救いだった。なんか言われるのかな〜言われたら嫌だな〜って自分がずっと緊張してたことに気づいて、こんな意味のないストレスを受けなきゃいけないのってやっぱりおかしいんだよな……と思った。そういった異性愛規範へのうんざりした思いとはまた別で、藤沢さんと山添くんの会話でも出てくる「ケアをし合うのに理由はいらない」という主張をするうえで、ふたりが恋愛に回収されない、茶化されないというのはとても重要なことだと思う。


山添くんが「男女の友情は成立するか」という、最も愚かで前提が破綻した設問に対して愚かだという認識を示していたこと、藤沢さんが「性別とか好き嫌いとか関係なく困ってる人を助けるのは当たり前」という考えを持っていること、山添くんと前の職場の同僚の縁が切れたりしていないこと、栗田科学の社訓が「人にやさしく、自分にもやさしく」であること。

藤沢さんはPMS、山添くんはパニック障害、栗田社長と辻本さんは自死遺族、という「事情」があるけど、でもここで描かれるような「事情」のない(ように見える)ひとにもケアは必要なんだということも強く感じた。そういう社会であれば山添くんはパニック障害にならなかったかもしれないし藤沢さんは会社を辞めなくてよかったかもしれない。栗田科学をユートピアにするんじゃなくて、誰もが当たり前にケアを受けられる現実が必要なんだと。なににもかかわらず、地球上の全員で大丈夫にならないといけないんだよわたしたちは。
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