ぴよ

若き仕立屋の恋 Long versionのぴよのネタバレレビュー・内容・結末

若き仕立屋の恋 Long version(2004年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

パトロンに見捨てられて落ちぶれてしまった美しい売春婦とその売春婦のために服を作る仕立て屋のお話。

やっぱり王家衛の作品って点と点が作品のそこらじゅうに散らばっていて、それを繋げていく線を描く描写がとても美しい。
その美しさは清らかな人工的なものではなく、生々しいリアルさ、ノスタルジー、汚らしさも残っている「生」の感触が伝わってくる。
売春婦の絢爛豪華な生と生きようとしがみついて手段を選ばなくなった生の2つを見て、仕立て屋の彼はあまりにも隔絶とした差に受け止めきれなかった。そりゃそうだ。信じていた神さまのような存在であり初恋の人がそうなっていたら、私も逃げて以前の彼女だけを括った美しい思い出へと昇華していたかもしれない。
でも彼は落ちぶれて病気を患った彼女でも服を届けに会いにいっていた。それは以前の着飾った彼女の影を追い求めていただけではない気がする。どんな姿になったとしても、彼は自分の服を着ている彼女が美しく、その手の感触で教えられてしまったものが忘れられなかった。そして美の象徴として諦められなかったのからだと思う。
職業から彼らが心理的に近くなったとは言えないが、その彼女の手と細やかに丁寧に作られた衣装の細部には彼の思いが詰まっていた。
彼らを最後結ばせたのは彼ら自身の職業的な手と肉体的(物理的?)な手であると思う。
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