思えば、岩井俊二は『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』の頃から、「if」の世界に自覚的だった。
もし震災が起こらなければ、彼らの人生は今とは違ったものになっていただろう。
路花と真緒里は出会うことさえなかったはずだ。
人の運命は自分の選択だけでなく、外的な要因によって左右される。
運命に抗うように、路花はキリエに真緒里はイッコになる。
しかしたとえ名前を捨てても、人は過去から決して逃れられない。
アイナ・ジ・エンド(キリエ)の歌声は素晴らしく、その強度に比して、物語の散漫さが目立ったのは否めない。
もし可能なら、真織里を主人公にした物語を見てみたい。