こなつ

流麻溝十五号のこなつのレビュー・感想・評価

流麻溝十五号(2022年製作の映画)
4.0
民主的で明るいイメージが強い台湾で、1947年から1987年までの長い期間、白色テロ時代という厳しい弾圧が行われていたことをこの作品で知った。被害者6名の口述を纏めた著者をベースにした映画化。実際に収容所のあった緑島での撮影は、負の歴史を描いたリアルで重い映像だったが、自由であるというのがどれ程の喜びかを改めて感じる。

1953年、自由を口にする者は政治犯として捕まる時代。台湾で行われていた愚かしい思想統制により、孤島の強制収容所に送られた女性達の生きざまを描いている。実在した複数の人物を3人の女性に投影して描かれたドラマ。純粋な心を持ち、絵を描くことが好きな高校生。子供がひとり生まれてすぐ投獄された正義感の強い看護師。妹を拷問から守るため自首して囚人となったダンサー。台湾語、北京語、日本語あらゆる言語を駆使しながら一日一日を生き延びようとしていた。

過酷な環境でも強い意志で信念を失わずに生きようとする女性達の姿に胸が締め付けられる。日本の統治下で学んだ日本語を話して、大陸から来た外省人には理解出来ない秘密の会話をする女性達。権力のもとに名前ではなく番号で呼ばれ、監禁生活を強いられ、重労働をさせられていた。タイトルの「流麻溝十五号」はその強制収容所があった住所。

中国共産党との戦いに敗れた蒋介石が率いた台湾国民政府による30年もの恐怖政治は、1975年蒋介石が亡くなって漸く民主化へと進み始めた。子供や孫に囲まれ裕福な生活をしていた家で、処刑など一連の処分を認める書類にサインをする蒋介石の姿はあまりにも非情でやるせない。

エンドロールに流れる笑顔の囚人達の写真、処刑を前にして自分の信念に誇りを持ち諦めることをしなかった彼らの想いを深く受け止める。
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