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PERFECT DAYSのnetfilmsのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.3
 東京国際映画祭を開催している有楽町とは目と鼻の先の日比谷で今週末だけ上映があると知り、最後まで行くかどうか迷ったのだが、不覚にも泣いてしまうほど完璧な映画だった。これは本公開までに観ておいて良かった。役所広司の人生は同じことを繰り返しているように見えて、すこしずつ景色はうつろう。それはヴェンダースが敬愛して止まない小津安二郎の「反復と差異」にも非常によく似ている。完璧主義者の主人公は1日を完璧にスケジューリングしているように見えるが、世の中は一瞬の積み重ねであるとヴェンダースは言う。その中には衰え行く自我との葛藤や大事なことは胸に秘める彼の魂がそこに在る。デジタルな電波が飛び交う東京の街が、どうやらヴェンダースには180度真逆の世界に見えているらしい。そそり立つ東京スカイツリーの高さを仰ぎ見る主人公の姿は確かにちっぽけだが、そのちっぽけな存在にも生命があり、魂があり、妥協出来ない生き方がある。『リスボン物語』以降のヴェンダース作品に正直言ってあまりピンと来ていなかった私だが、今作の崇高さを見て、絶頂期の『都会のアリス』や『パリ、テキサス』を思い出した。公開時にまたあらためて加筆・修正してアップしますが、とりあえずROCKおじさんはLOU REEDの『TRANSFORMER』やpatti smithの『horses』は聴き直しておくべきだと思う。
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