安堵霊タラコフスキー

PERFECT DAYSの安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.9
ジム・ジャームッシュのパターソンにも通じる日常映画。

大した事件が起こらない役所広司演じるトイレ掃除の男の暮らしをただ映しているだけなのに豊かさで溢れた描写が記憶に刻まれる内容が白眉で、そしてそれ故に後半の日常の些細な変化に寂寥感を覚える作りとなっているのもまた素晴らしい。

思えば都会のアリスとかさすらいとか初期のヴェンダース作品も大きな事件とか起こらない代わりに普遍的描写に秀でた作品だったからその意味で原点回帰な趣が感じられるところも良くて、そんな作品をヴェンダースの敬愛する小津の国で撮ったというのにも感じ入るものがある。

パティ・スミスのHorsesとかカセットでアルバム聴いてるのに途中から再生になってるところとか些細な点が気になることもあったが、この作品全体から感じ取れる良い味わいのことを思うと本当に些細なことなので、2023年の日本公開映画のマイベストに選びたい。