予告編通りのイメージだった(褒め言葉)、が本編で出るperfect daysは鳥肌。ニーナ・シモンのfeeling goodは合いすぎでしょう。音楽も含めヴェンダース。相応しい褒め言葉にならなそうだけど、「飽きない退屈」のような映画だった。
東京は便利だけど汚い。けれど、そんな街でこの物語が紡がれるのだから。日常の優しさや美しさを見つけては笑みを浮かべながら。自分の好きなことにお金を使って嗜み、整った環境で暮らす、そしてそれを見ず知らずの人間にも分かち合い、人知れず尽くす。この人は誰よりも賢く、完璧な日々を知っている。決して簡単なことじゃない。全ては語られないけれど、断片的に彼の人生が徐々に浮き彫りになっていくのも良かったし、あなたがこの人生を選んだことは至極真っ当だと思うの。なんて理想の生活。
沢山切り取られる東京の街並み、車道。
不思議だなあ。いつしか日常で綺麗だなあと感じ、どこか見たことのあるような景色がスクリーンに映ること。ヴィム・ヴェンダースは本当に良く見ているね。（私も浅草駅の地下鉄に続くあの狭くて汚い出口が好きなの…）外から見る理想の日本ではあるけれども。それでも、きっと人は雑踏に揉まれてはこの景色が側にあることに気づけなくなる時があるから。きっと時を経てみたら、映像に残ったこの景色が恋しくなるかもしれない。映画史においても、日本史においても大切になる映画を撮ってくれてありがとうな。役所広司は最高。
お金で買えないものってあるよねえ。
