くらげ

PERFECT DAYSのくらげのネタバレレビュー・内容・結末

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

POV:訪日インスタグラマー
&
アナログおじさんのルーチンVlog

あまりにもセリフが無くて↑なのかな?と訝しむや否や、彼の感じている幸せや守りたい日常の豊かさに胸を打たれる。
1曲目から朝日楼で、ドン底転落人生を見せ付けられるのかと思っていただけに、徐々に彼の為人が見えて来ると影の中にこそ光があることが分かってくる。
浅草の古い地下街の小汚い飲み屋、数m先には真新しい綺麗な通りがあるけれど、ちらりと眺め遣るだけのシーンで映画のテーマを完全に理解。

周囲には平山さんは何を考えているのか分からない人、と評されるんだろうけれど、役所広司さんの人間味溢れる表情と、差し挟まれる毎晩の夢?心象風景?に表現される通り、きちんと全てを見て、感じて過ごしている。
年輪のある顔だからこそ為し得る芝居が最高だったなぁ。
所謂変わった人ではあるんだけれど、要するにめちゃくちゃ普通の人。
僕は彼と近い世界の人なのかも。

それだけに「何も起こらないでくれ!」と願いながら観るというハラハラ。
不可逆的な事件が起きてしまうのではないかと不安で仕方なかったですね。
平山さんが唯一怒気を滲ませたのがシフトが乱れて日々のルーチンが崩れた際。
大事件ですよ。
少しルーチンが崩れるとガス欠だって起こす。

まず、目覚めて即、布団を畳める胆力に脱帽。

お気に入りのおばんざい屋?のママの前ではほんのり饒舌。
そう!そして、今作最大の山場が石川さゆり様の朝日楼の生歌。
カウンターの中でも鈴の様な声音でキュンキュンしちゃうのに、まさか唄って下さるなんて。
フル尺でお願いしますよ。お願いしますよ。
映画内では売春宿の歌というよりは、House of the Rising Sun のタイトルの方が大切なのかな。

連れとラストシーンの涙について議論。
お気に入りの歌と美しい日の出がハマって心を打たれているのかな?と思っていたけれど、どうやら彼が生家方面で何やかんやあって元々住んでいた世界、人生を切り上げて今の生活を送っているらしいのを鑑みるに、新しい1日は新しい人生の始まりで、毎日彼は生まれ変わっているからこそ、毎日を愛おしむことが出来ているのかも。
あぁ良い毎日だ。これがパーフェクトだ。と言える日々を過ごせるのって本当に稀有で幸せなことだと思う。
ということは、僕にはまだまだ彼の世界は遠いのか。

「木漏れ日」は英語に直訳出来ないのは有名だけれど、答え合わせの様にラストに紹介される言葉。
映画のタイトルの双璧として美しい演出でした。
くらげ

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