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PERFECT DAYSのnurukoのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
3.8
役所広司が名優すぎる。彼自身は語らないのに表情と佇まいで全てを語っているし、一挙手一投足から目が離せない。最後はCMBYNや燃ゆる女の肖像に匹敵するインパクトがあったし(それを狙って撮ったのかな?)、あーもうほんと世界の宝だわと思った。

音楽もツボだった。いきなり私の大好きな「朝日のあたる家」が流れ出してマジかと思っていたら(好きなのはちあきなおみ版)さゆりが歌い出した上に当然だけどめちゃ上手くてこんな歌の上手いママおるかい!ってちょっと笑っちゃった。ウイスキーがお好きでしょでも歌うのかな?と思ってたわ(なわけない)。

内容に関しては、終始ヒヤヒヤして仕方なかった。彼が大事にしている日々のルーティンはすぐ壊れてしまうものだったから。たとえばたまたまスーパー助っ人掃除人(安藤玉恵)が来たけど実際ああはいかないことが多い。いつ歯車が狂って取り返しがつかなくなってしまうのかな?って思いながら見てたんだけどそうはならなくて、なんていうかこれはファンタジーなのかもしれないと思った。こうだったらいいよねっていう理想。実際、彼の慎ましい生活はとても美しくて魅力的だった。自分の塵芥にまみれた暮らしを反省するくらいの魔力があった。

新美の巨人たちで「THE TOKYO TOILET プロジェクト」についてやっていたのを先に見ていたのだけど、このトイレの試みも理想が形になったものだから、元ネタが理想なら映画も理想になって当然かなと思ったりも。でもその理想を超えてくる役所広司の名演よ。やはり世界の宝……。
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