市子のnurukoのネタバレレビュー・内容・結末

羅生門的手法で少しずつ明かされていく市子の生い立ちをただ見守る。市子はこんなに気の毒な人で、こんなことになってしまったのは仕方のないことという風に語られる。登場する男も「可哀想な市子を受け止めて守る」と言う。でも市子はその言葉からするりと逃げる。利用する強かさもある。それがとても好ましかった。

ただ、最後、市子が私は幸せだったとか話し始めるのが台無しだなと思った。最初から見ていれば市子が長谷川との暮らしでどれだけ幸せを感じていたか分かると思うのだ。また、こうしてしまったことで制作側の、市子は不幸で気の毒な人なんですよという念押しが透けて見えてしまう。市子に対して同情的になるように促すことで、市子の犯した殺人という罪がぼやけてしまうように感じる。

杉咲花はとても良かった。華奢な体だけど頼もしく見えるのはおちょやんと同じだなと思いながら見た。彼女の関西弁は聞き心地が良くて好き。