ShinMakita

PERFECT DAYSのShinMakitaのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
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☆俺基準スコア:4.4
☆Filmarks基準スコア:5.0




東京・押上。古びた民家で暮らす平山は公衆トイレの清掃員である。毎朝近所の婆さんが道路を掃く音で目覚め、植木に水をやり、作業着を着てクルマでシフト通りにトイレを巡り、徹底的に清掃する。仕事が終わって帰宅すると、いつも浅草駅地下の一杯飲み屋で酒を飲み、銭湯の電気風呂に顔まで浸かり、布団に入ると文庫本をめくりながら寝落ちして、また翌朝を迎える。決まったルーティンとスケジュールの中で、車内で聴く曲や窓からの景色、昼休憩中に見上げる木々の木洩れ陽などを楽しんでいる。何も変化がなく、ストレスがあるのか無いのか分からないまま流れる時間。だがその時間の間に、ちょっとだけ変化が訪れて…


「PERFECT DAYS」


以下、「今度は今度 ネタバレはネタバレ」


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現代ニッポンで生きる我々がすっかり忘れていた事象と精神を、役所さんの身体を借りてドイツ人から教えてもらった…そういう映画です。スカイツリーも聳え立ち、トイレもモダンで近未来的でスマホもネットも当たり前な世界の片隅で、フィルムカメラとカセットテープ、古本屋の文庫本に喜びを見出すミニマルな人生。仕事への矜持、自然の美しさを愛する心、ひとへの優しさ…誰もが持っていたのに、今では忘れかけていたその素晴らしさに気付かせてもらいました。いつもの飲み屋の「いらっしゃい」じゃなくて「おかえり」という声かけ。休日だけ通うスナックの興が乗ったら歌うママ。舞踊を披露するホームレス。ちょっと嬉しくて面白くて、何も無い日常の中にも楽しいことはいくらでも転がっているし、驚きもトラブルも、いくらだって起こるのです。多分明日からの生活で、平山のライフスタイルのことをずっと考えていくだろう。とりあえず、明日外に出たらまず、空を見上げようっと。ここ10年で一番身近でかつ、一番心臓に響いた作品。最初から最後まで、なんとなく涙浮かべながら観てたけど、ニーナ・シモンの「feeling good」でついに涙腺決壊。

It's a new dawn
It's a new day
It's a new life
For me
And I'm feeling good…

…座右の銘にしたいよな、この歌詞。
ShinMakita

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