note-director, actor
始まって1秒でびっくり。サイズが4:3スタンダード。
色彩と照明と構図が、ヴェンダーズ監督の世界。
ちょこっと開いた窓からの景色、
アパートの紫の窓明り、
東京の街のロングふかん、
自転車の走行シーンの夕陽の逆光、
三浦友和さんと平山の間にうまいこと川面のきらきら映り込み、
夢シーンのモノクロ。
脚本は、おだやかーでそれがウリの映画だが、80歳超えたスコセッシ監督がいまだ攻め攻めのキレキレなのとは対象的。
しかし、一見、静かで穏やかな初老の男のささやかな暮らしに見えても、そこかしこにヴェンダース監督の、フツーなわけないやろが散りばめられていた。
特に、カセットテープの選曲が、どう考えても平山ではなく、ヴェンダーズ監督チョイス。
アニマルズは、石川さゆりさんリンクで浅川マキさておき、
パティ・スミスで若い女の子が「これ好き」って、ルー・リードもっ。平山は若い頃NYパンクだったのか??とどめがニーナ・シモンだった。
おかげで、田中みんさん演じるホームレスのおじさんも、まんま、舞踏家アーティストに見えてきてしまった。
そもそも、パティ・スミスのあのアルバムを後生大事にカセットで持っているなんて、時代についていけないアナログ人間というより、うるさ系の洋楽ロックおたくである。
70年代、若い頃の平山は、反逆的で最先端、広告代理店で大きなCMの仕事してましたが、欺瞞にみちた世界にいやけがさし、今、俗世間を離れ、こうして暮らしてます、という感じすらした。
ヴェンダース監督しかり、この映画仕掛けたPさまや、ユニクロの会長さんがご自分の若い頃を、そういうところで反映させてる感じがした。
音楽以外は、役所広司さんの演技こそ、パーフェクトだわ。
感動したのは、役所さんの
演技と、画づくり。
結局、この映画はヴェンダース監督が、小津監督に敬意を込め、また同年代のおじさんたちにサービス満載で撮った東京都トイレプロジェクト観光PR映画ということなのかいな?
ヴェンダース監督が人生かけて書いた脚本で、最後に残したい映画とはちょっと違うような気がした。
ジムジャームッシュ監督の「パターソン」を見た時、なんてレベルの高自治体PR映画!と思ったけど、それに近いような気もした。
電通と大企業が透けて見えた。
ともあれ、役所広司さんじゃなかったら、どう評価されていたのだろうか?
そりゃあ、PCもスマホもテレビもなく、木漏れ陽にしあわせを感じる暮らしは、うらやましい。
しかし、尊敬する巨匠監督方、あんまり回顧主義に走らず、その極めぬいたウデで若手監督と真っ向勝負してほしい。
でないと、あのイケイケだった監督がそんな映画撮ったんだ!と、違うところで泣けてくる。
日本の大企業に魂売ってはいかん。
追記:結局平山は、お金に困ってやそういう生活しているんじゃなく、むしろお金ありあまってるヒトがあえて選んだ生き方のような気がした。実家は運転手付きの高級車、跡継ぎするのイヤで妹に押しつけて逃げたんかもしれんな。弱者ではなく、道楽。
こころ打たないのは、そこかな。
あとやっぱ、ユニクロの衣装提供が安っぽすぎて、味がない。