映画太郎

PERFECT DAYSの映画太郎のレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.0
鑑賞直後はぼんやりとした印象で、★3,0くらいの評価だった。でも一晩たって、この作品についてのレビューを読んだり、いろんなことを考えたりしているうちに少しずつ評価が上がっていき、「もしかして今年のベストムービーだったのでは?」と思うようになった。

映画の宣伝コピーには「こんなふうに生きていけたら」と主人公の生き方を理想化しているが、自分が心打たれたのは「こんなふうに生かざるをえなかった」平山の人生の影の部分に対してだった。淡々とくりかえされる彼の平穏な日常は、自ら選び取ったことばかりでなく、過去のさまざまな苦悩や葛藤をへてやっとたどり着いた安息の境地だったのかもしれない。ラストシーンのいかんとも言い難い表情の機微には、彼が歩んできた人生の喜怒哀楽、悲喜交々がめまぐるしく凝縮されているようで、思い出すとじんわりと泣けてくる。

「この世界には、本当にたくさんの世界がある。繋がっているように見えても、繋がっていないことがある」

そんな目線で年末の東京の街を眺めてみれば、世界とは、人生とは、本当に多様で豊穣であると思わされる。今年一年を締めくくるにふさわしい映画体験だった。