パイルD3

PERFECT DAYSのパイルD3のレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
5.0
Filmarksは5点満点ですが、
これは10点中10点でしょ。

ようやく今年初の映画館鑑賞。
私は例によってチョロいので、ちょっとしたところが刺さってしまってポロポロと泣かされた。
そんな「PERFECT DAYS」。

「今度は今度、今は今」…という言葉が出てくる。
これが「パーフェクト・デイズ」というタイトルの、真ん中にある気持ちの部分を表している気がする。
“明日は明日で、今日は今日“と聞こえてくるようでもある。
主人公は、明らかに何の変化が無くても今日を丁寧に生きている人物だが、そのことが明日と今日の違いとは何なのかを問いかけてくる。

トイレ清掃を生業とする主人公は、早朝、アパートの玄関から出て仕事に向かう前に、ルーティンとして空を見上げて微笑む。
この主人公によるI日のデフォルトの姿は何度も登場して、いかにも今日は今日、という日記の始まりのようでもある。

久々のヴェンダース監督作だったが、今の東京を舞台にして、ドラマ性、会話、動き、音といったいろんな作劇的なものがあえて抑制されて、これだけ完成度の高い映画を撮れることが衝撃。
音楽も特別な使われ方をしていて、ある空間でしか使われないところがイイ。

そして、
観終えた後に、誰しもの頭の中でリフレインするであろう役所広司の顔がとにかく素晴らしい。
無口でいかにも無骨で無表情な人物なのに、さりげなく随所で喜怒哀楽の印象を残してしまえる自然な演技が、奇跡のような輝きを放っている。もう顔が奇跡です。

言葉ではなく、時にはリアクションとしての微笑みであり、時には心の中を見せる微笑みという、いくつもの意味を表現している七色の小さな“微笑み“が、人物を語る重要なポイントになっている。

終幕にすべてを照らす太陽は、「明日は明日」と言っているようにも見えた。

これは傑作です。
パイルD3

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