パイルD3

青春18×2 君へと続く道のパイルD3のレビュー・感想・評価

青春18×2 君へと続く道(2024年製作の映画)
4.5
「パストライブス/再会」のレビューをあえて再録しますが、
“薄らぐ遠い記憶の中でも、文字で言うならそこだけ太字になっている時間というのがあるものだ。そこに気持ちだけはすぐにでも飛んで行けるような、誰しも自分ひとりで守って来たような場所がある…“

この作品も、同じ書き出しでもいいくらい、遠い日々の想いの行方を描いた作品です

《パストライブスとの相似部分》
二つの国の合作であることをはじめ、36歳という年齢や、異国を訪ねる設定など重なる流れもいくつかありますが、当然伝えてくるものは全く違います
いずれも、今年の公開作の中でも明らかに上位にランキングされるであろう傑作です

《人物たち》
とにかく出てくるおじさん、おばさんから若者まで心優しき好人物ばかりで、忘れ難い顔っぷりのいい俳優が集められていて、こんなところが涙腺決壊にも直結しています


【青春18×2 君へと続く道】

18年前…台湾
 
台湾市街、旅の途中で財布を無くして、目に入ったカラオケ店に飛び込み職を求めるアミ(清原果耶)が、4歳年下でまだ高3のジミー(シュー・グァンハン)とお互いアルバイトとして働くうちに想いを寄せられるが、彼女はある日突然帰国することになり、予期せぬ別れが訪れる…

18年後…日本

18年のブランクを経て、2人の想いが解き明かされていく…

《18×2という符号》
タイトルの18×2はジミーの年齢を指してもいるが、18年前に成就するどころか、告白することすら出来なかった18歳の青年の、その場に残された想いは、そこに18年くらいの年月が流れようと消え去るものでは無い

頭ではわかっていても、そこに想いを遮るようなブランクなど存在していないのだ

彼にとっては18年後は単なる折り返し点でしかないという意味の18×2でもある

そして2人にとっての、それぞれの18年を
意味する18×2でもある

《Love letter》
岩井俊二監督の「love letter」が、18年前の2006年当時のアイコンとして、“手紙“というキーワードを印象付ける形で登場する

《手》
手をつなぐという行為が、告白を象徴するものとして描かれているのもなかなかいい

《黒木華》
「ゴールド・ボーイ」に続いて、この人が脇役としても、ナチュラルなのに印象的に昇華する演技力を見られて嬉しい限り
先だって日本アカデミー賞をダブル受賞していた方のような、あざとさのある粘っこい演技よりこちらの方が好み


《藤井道人監督》
「光と血」、「新聞記者」、「ヤクザと家族」、昨年の「最後まで行く」、配信の「パレード」と、30代ながらも大器を思わせる感性豊かなシナリオとキレのある演出力が、意外とも思える恋愛劇ではあるが、代表作と読んでもいい完成度まで高めている。
今、最も目が離せない監督の1人


伏せられていた部分を開放して、全ての解答を見せられるような後半部分の流れは、交錯する想いが込められていて、胸熱号泣…
これはやられた…
パイルD3

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