files

PERFECT DAYSのfilesのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.0
撮り方が美しく、役所さんの演技がすみずみまで絵になっていた。ルーティンをこうも茶道の所作のように美しくできるのは見習いたい、全力で。明日からがんばろうという気になる。

それだけなら満点なのだが、空々しくも感じて満点をつけられない。なぜかというと、平山はもっとコスパのよい地方のアパートに住もうとはしていない。地方に移住して下世話な井戸端会議のネタになることは拒絶している。彼は都会の地の利があるうえで、他人に無関心という都会のメリットを享受している。
会社の業務は自治体から委託されている健全で安定した内容で、彼は仕事ぶりを評価されているので非正規といえども年齢だけでリストラされていない。
会社が健全であり、正社員のような責任はとらなくてよいが、ルーティンをこなしていれば高齢まで続けられる非正規社員なんて、世の中の何割かが喉から手が出るほど欲しいポスト。

空々しさの理由は映画後半とエンドロールでちゃんと回収される。平山にはどんな背景があり、この映画は誰が誰のために作ったか。
場内が明るくなって周りを見渡すと客層が年配の方々であり、富に興味がなくなった人が共感する、理想のセカンドライフの映画だったことに気づく。
余分なゴミを削ぎ落としていく人間の日々。だから、Perfect Daysなのだ。
files

files