前情報をまったく入れずに鑑賞。客はかなり入っていた。シンプルに映画としての点数をつけています。
いい映画だったとは思いつつ、いまだに日本人にとっての「完璧な日々」が”清貧”というのは気持ち悪いなあという感覚は付き纏っていた。エンドロールでも衣装協力がユニクロであることに気づいたので、まさに「Lifewear」だなあなんて呑気なことを考えながら。
その後、色々と調べてみたら、この気持ち悪さの正体に気づく。映画表現としては本当に素晴らしいと思ったので、作品背景のことで批判するのはおかしいし、手放しで絶賛するとイタい。誰も得しない状態になってるのが残念。
職業差別に関する部分だけ、あの手この手で何度も繰り返されるのが不気味。直接的なセリフを言わない(子供の手をウェットティッシュで拭く)、セリフと目線で強烈な差別意識をぶつける(「まだあの仕事やってるの・・・？」)など、その部分だけ手法が豊か、かつ切れ味が鋭すぎる。
「私たちは職業に貴賎なんてないと思ってます！ないです！自分たちでは絶対にやりませんけど！ないですからね！」と逆に言葉を重ねすぎていて、あの人たちに強い差別意識があるのかな〜なんて、そういう邪推もしてしまう。
柄本時生の役へのイライラが頂点に達した直後、ある少年が彼に会いにくるシーンがある。そこで観客に、「あ、柄本時生の役も、もしかしてそういうことなのかな」と自然と思い至らせる瞬間が、本当にガツンときた。とても性格の悪い演出だったけど、これこそ脚本と演出の妙だなと思う(※あくまで個人の解釈です)
ところどころセリフや演出が”邦画”的にクサくてイタかったので、そこをヴィム・ヴェンダースに脱臭してほしかったな。
