kumi0314

PERFECT DAYSのkumi0314のレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.5
渋滞する首都高の上りレーンをよそに
主人公の平山が運転する車は
下りレーンを軽快に走っていく

まるで人生のラットレースから降りた平山を象徴するような印象的なシーンだ

見上げるシーンが多いのも平山が今の生活を自ら選び満足していることを現しているように思える


台詞はほとんどなく、眉や唇、目の微かな筋肉の動きで感情を表現する役所広司の究極の【静】の演技はカンヌで主演男優賞を受賞した。


ヴェンダースというと世代的に
「ベルリン・天使の詩」のロングラン上映の記憶が残っている。
日比谷シャンテだったか。


そしてこの映画を観ながらビルの上から
人間の様子を俯瞰的に眺めている天使のシーンを思い浮かべた。人間や人生を俯瞰でみているような佇まいの平山と重なるからだろうか。


ただ…ちょっと美しすぎるのよ全体的に。
禅の境地のような。
公衆トイレの清掃員ということで(しかも渋谷)
どう撮るのかなと思ってたのですが。
その辺りとか。


なので若い人の感想が気になりました。
面白かったのがBRUTUSに掲載された
俳優・松田翔太の感想。

『冒頭からおじさんの一日を延々と見せられるという流れに、正直、どうしていいのかわからない。その時は『なんなんだこれ』と思いました。何を感じればいいんだろうと、冒頭の20分くらいは本当にしんどかったんです。』(一部抜粋)

そうそう、そうでなくちゃ。
まだ若く夢の途中の若者(私から観て)は
この映画の感想はこんな感じだろうなと思う。
それでいいのだ。


身近に死を感じるような体験や
自分の能力の限界がみえたり
人生の有限性を体感したらこの映画がまた違って観えてくる。
それは単に歳をとったから、というのとは少し違う。

ヴェンダース映画ということで観る前は睡魔との戦いが訪れたらどうしようと心配したけれど稀有に終わりました(よかった)

音楽もすごくよかった。