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PERFECT DAYSのyueのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.3
別に観ようと決めていたわけではなく、用事が終わってふと、観れないかなと思って調べたところ、ちょうど良い時間にやっていたので、足を運びました。

「平山」がどんな人なのか、詳しい描写はなく、ただトイレ掃除を仕事にしていて、日常を切り取るのが好きで、あまり喋らない無口なおじさん。
妹や姪のにこちゃんとのシーンでは、過去に「何かがあった」のだろうという程度で、具体的に平山さんがどんな生き方をしてきて、どんなものに触れどんな人と過ごしてきたのかを知ることができない。
ただ、平山さんが生きている今の日常を、垣間見ることしかできない。

その中で、今観ているのは「映画」だから、何か起きるのではないだろうかというソワソワ感が抜けないのよね、現代人なので。
でも要らないの、そういうのは、この映画には。映画というか、普通の日常には。
毎日毎日、色んなところで色んな出来事が起こり、私たちはSNSに振り回され、必要のない悩みに悩まされている。常にスマホを持ち歩き、ネットとの共存生活を余儀なくされている。便利だよ、とっても。だけど絶対に必要なのだろうか。たまには手放しても良いよね。というか、ネットにたまに触れる程度で良い、そういう生活がしたい、それで十分、そんなふうに思わされる2時間だった。

トイレ掃除、やりたいと思う人なんて少ないと思うし、私もそのうちの1人。だけど平山さんをみていたら、そんなことですらも幸せそうに見えて、羨ましくなった。今の私は、今の生活で本当に満たされているかな。世の中に逆らうわけでもなく、流れに乗るわけでもなく。ただ日常の、些細な変化に対して気づき、受け入れ、丁寧に対応していく、ひとりの男性の日常の切り抜き。

まさに「こんなふうに生きていけたなら」。

この映画を観て、同じように思う人に出会いたいなと思った。
そして今自分が好きな人、大切にしている人は、きっと同じことを思うだろうな、とね。
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