まさにパーフェクト。
ヴィム・ヴェンダース作品と聞き、絶対押さえねばと観てきましたが。
独り慎ましく静かに穏やかに生きる男の物語をひたすら丹念に描いた映画でした。
役所広司が主演していなければ、ドキュメンタリーと見紛うまでの地味さであり、さまざまな感情が沸き上がった。
主人公の平山を始めは微笑ましくも羨ましく感じながら、中盤にはすっかり彼の生き方に両足が入り込み、「この人のこれまでの人生を知りたい！」という熱が高まった。作り話なのに。
ラストのロングカットはもう、お見事というしかなく心を揺さぶられるものがあった。
美しく生きるとはこういうことか。
ほとんど全ての人が出来ないであろうが、最低限の装備で最大限に豊かに生きる姿を見て、現代人は何を思うのか。
「生きる」のラストと同じで、「これまでの生き方を悔い改める！」と感じながら次の日にはまたあくせくした暮らしに普通に戻っちまうんだろうな。
穏やかで優しく美しい映画をまだ撮れる巨匠に敬服。
