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PERFECT DAYSのmarikabraunのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
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映される公衆トイレが全てスタイリッシュでむかついた。一つでも地獄みたいに汚いトイレがあったらこの映画をもっと好きになれたかもしれない。海外に引っ越して初めて劇場で日本映画を、しかもヴェンダースを母国語で観られるありがたさを噛み締めつつ、馴染みのあるいくつかの風景を懐かしみつつも、上手く言葉に出来ないけど、こんな綺麗なもんじゃないだろう、と思った。おそらく育ちがよく若いころはシティボーイだったのではと推測される平山さん。規則的なルーティン(アケルマン見すぎの私はいつ人が死ぬんじゃないかと怖かった)を持ちながら、変わらないわけがないじゃないか、と不変であることに対してある種の執着じみた抵抗も見せる。バイトが当日に飛んで激務をこなした後も夢を見る=熟睡できていない彼の健康を案じずにはいられない、なんて冗談はさておき、美しく切り取られすぎてはいないか。

銭湯で立ち上がるおじいさんの尻に椅子がくっつくあの一瞬はずるい。いい年したおじさんたちが煙草に咳き込み、互いに影を踏みあうのも。
そしてラストの長回しは見事だった。日々の、人生の、あらゆる感情がごちゃ混ぜに現れては潜む顔の運動に、おそろしさを感じるとともに泣きそうになったのは確か。最後の表情に全てもっていかれた。@ Barbican cinema

…と思ったらそもそもの制作背景がユニクロと電通による渋谷区のトイレPRの為だったことを後から知る。全て腑に落ちた。
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