磯野マグロ

PERFECT DAYSの磯野マグロのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
3.0
【チ○毛のついてないトイレなんて俺は信じない】27

もともときれいな公衆トイレを、さらに磨き上げることが仕事の几帳面なおじさんの話。おじさんの朝は早い。毎朝家の前の自販機で買ったBossを飲みながら仕事に出かける。きちんとラベルが見えるように飲む。
仕事が終わるのはもっと早い。毎日、銭湯で一番風呂を浴びて、いつもの居酒屋で焼酎飲んで、本を読んで寝る。スマホもテレビも冷蔵庫も洗濯機もない生活。しかし、戸外でトイレ掃除してる制服を、仕事から帰ると部屋の中にかけておいて、週に1回コインランドリーで洗濯するだけ、とは? ホワイトカラーだってそんなことしないぞ。
「幻想の中の閑居」みたいなものは上手に撮れてると思うけど、生き方のかっこつけが過ぎる。いや、映画としてめっちゃ魅力的だし、日本に住んでない人が「いいですねーストイックでZENみたい。ミステリアス・ジャパン❤️」とか言うのはアリだけど、日本に住む人間としてこんなにリアリティがないものを祀り上げるのは欺瞞でしょう…。
まずおじさんキレイだしモテすぎ(そこかい!)。生きていくなかでのイヤなこと、イヤな感じって、生理的、物理的に耐えられないことが多いと思うんだけど、それが映画から排除されすぎ。トイレ掃除前からキレイ問題もそうだし、夏にツナギ着てても汗だくにならないし、慣れややる気の違いはあってもマニュアルがあれば基本誰でもできるはずの仕事(お給金高くないはずよー)なのにお金に苦労してない。下町に駐車場付きのアパート(しかもメゾネットタイプ)を借りて、そこから仕事場の渋谷に行くのにわざわざ高速に乗る贅沢ぶり。一事が万事そうで、まあ、もともとCMだし、その上澄み感がヴェンダースなのだが。
おじさん、男とはほとんど(とくに同僚の柄本時生にはまるで)口をきかない、返事もしないくせに、女とはちゃんと話をする。無口なたちじゃなくて、なにそれ、感じ悪っ、と思いました笑。
でもねーオリンパスのμとかあのラジカセ(同じの持ってました!)とか、懐かしい。育ちも良さそうだし、物持ちもよい人なんだよね。たぶん精神的にも4、50年前のものを持ち続けているかわりに、この生活に入る前の過去をばっさりと捨てたんだろうな。
磯野マグロ

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