病上がりの身体でハンドルを握っていた。
県内の上映終了が近づいている。屋上駐車場に向かうスロープの遠心力に逆らいながらアクセルを踏み続けた。
久しぶりの映画館は、平日の午前中ということもあり思いのほか早くチケットが購入でき、キャラメルポップコーンを買ってみた。
玄関に並べられた、鍵やカメラといった小物類。
見上げる空と新聞紙の中に包まれた紅葉の子。
毎朝のカフェオレと手探りのメロディー。
私っぽいから観てみなさいと言う2人の父親には、わかっているようでわかっていないと答えたい。決して外れている訳ではないけどね。
平山が磨くトイレがもっと寂れたトイレだったらどんなに良かっただろうと、利権を感じてしまいながらも、それが無いとこの作品がこの世に存在しないという矛盾に襲われた。