ごい

PERFECT DAYSのごいのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
3.8
休日のシャンテにて
上映直後の年齢層は高めに感じたが、口コミが広まったからか若い層も増えていた印象
これまで自分もヴェンダースは観ずに生きてきてしまったため、遅めの鑑賞になった。


主人公平山は日々のルーティンをこよなく愛しているように見える。大きな贅沢はせず、「通勤→カセットテープ→トイレ掃除→居酒屋→盆栽→文庫本→睡眠」という繰り返す日常の中に喜びを見出していく。この様子が海外では禅やマインドフルネスの体現として評価されているようで、まぁ確かにリアルな”丁寧な暮らし”はこんな感じかもしれないなぁと感じた。

ただ何か訳ありで今の生活をしているように見える平山だが、趣味は文化的で没落貴族然としている。なので典型的なワーキングプアとして捉えることは難しい。「お金がなくても日々に喜びがあればそれで充分さ」と解釈できるほど、リアリティはない。
それでも平山の目を通して、周囲の人の暮らしや人生に思いを馳せることができる点がこの映画の卓越ぶりなのかもしれない。

この作品は決して特定の社会層にフォーカスを当てて問題点を浮き彫りにするものではないが、人間の暮らしなんて一括りにできるほど簡単なものじゃないぞということは教えてくれる。
ごい

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