丁寧に生活し、決まったルーティーンをこなす。
風呂無しアパートで食事も質素だが、毎日首都高を使って出勤し、フィルムと現像代を毎週出費する、ちょっとした贅沢も。
同じことを繰り返すことで、小さな変化にも気付き、日々の中にささやかな喜びを見つけることができる。
カセットテープで音楽を聴く。古い小説を読む。フィルムで木漏れ日を撮影する。こういったこだわりは、インディペンデントに生きるために必要な要素だ。個ではあるが孤独ではない。トイレ掃除という公共に資する仕事は、社会とのつながりなのだ。
誰かがやらなければいけないことを引き受けることで、社会の重要な成員となる。
この映画に描かれている真理のひとつは、中年男にとって、若い女の子に存在を認められることは生命力を活性させるのに重要な要素だということ。これは黒澤明の『生きる』でも描かれていた。
いやホントそんなもんなんです。
ヴィム・ヴェンダースの久々の快作。
色使い、画作り、音楽、情感、全てが美しい映画でした。