すてき。
また同時代に作品を追いかけられるのが楽しみな映画作家に出会えたという確信的喜び。
先日「幸福なラザロ」を観たばかりの俄か者が言うのも何ですが、豊潤なイタリア映画の伝統を感じさせながら、瑞々しいまでの新しさも同時に味あわせてくれる。
アリーチェ・ロルヴァケル。すてきだ。
経済の歯車に巻き込まれる弱者を見つめるネオレアリズモ的な視点と、そこから大きく飛躍するようなフェリーニの様なマジカルな瞬間。
神話的な寓意が込められたシニカルさと、どうしようもない人たちを慈しむ様な柔らかなヒューマニティが調和する。
オルフェウスの挿話にセリーヌ・シアマ「燃ゆる女の肖像」を想起しつつ、印象的な撮影はエリザ・ヒットマンの作品も手掛けるエレーヌ・ルヴァールと、近年の映画の潮流との確かなシンクロニティが。
富を奪い合う男権的な世代から、分かち合い支え合う女性的な新しい世代へ。
鑑賞中も鑑賞後も、意識が刺激され思考を絶え間なく促される。
なんて豊かな映画なんだ。
ジョシュ・オコナーの、この映画においてはある意味"異質"なキャスティングが、作品の文字通りの今でも、語彙的な意味でもglobalなテーマを補完していて、また良い。(また、彼と親密になるのが"イタリア"という名のポルトガル語を話す女性というのも巧い)
彼のぶっきらぼうなのに不思議と惹かれてしまう個性が、これまた最高に活きている。
端役に至るまで、素敵な演者ばかり。
イザベラ・ロッセリーニはすっかりかわいいおばあちゃんになったなぁ。