2024.10.30
予告を見て気になった作品。
邦題からドキュメンタリーかと思っていましたが、まさかの3時間超えの長編ドラマ。
つい最近まで暑かったと思いきや急に寒くなり、日本も邦題通りのような状態になりつつある今ですし、今回鑑賞です。
トルコ、フランス、ドイツ合同製作。
トルコ、東アナトリアにある、深い雪に覆われたインジェス村。
村にある学校で美術教師として働くサメットは、村の大人たちとも親交が深く、特定の生徒からも慕われていたが、それが差別とされてしまうことも。
長い間雪に覆われ、雪が溶けても春は来ずにすぐ夏が来るだけの村で、親しい生徒からサメットに対する身に覚えのない密告や知人に紹介された女性・ヌライとの関係など、様々な出来事が起きていくー。
むむっ、なるほどなるほど……。
ドラマとは言いつつも何か特殊な出来事が起きるなどはなく、村のいたるところで繰り広げられる会話劇が主体の物語。
それも、屋外は凍えるような寒さで震えながら歩くか車か馬ソリに乗って移動するかしかなく、村民は基本的に暖炉の前で談笑するしかない。
こうした舞台設定で会話劇に持っていくというのも珍しいような気がして印象的でしたね。
話している内容も、昔馴染み同士でどんなことも気軽に話しているような雰囲気の中に、これからもまだまだ村にいなければならない劣等感や、もうすぐ村から離れられるという優越感が滲み出ていたところもあり、閉塞的な村特有の排他的な雰囲気も出ていました。
しっかしなっが〜い
3時間超えということで、ある程度覚悟はしていたものの、パッと思いつく3時間越えの映画は『アバター』だったり『アベンジャーズ エンドゲーム』だったりの展開がコロコロ変わりストーリーがどんどん進んでいく作品や、同じ会話劇でも『ドライブ・マイ・カー』は邦画なので全編字幕を追う必要がなかったので、ひたすら会話劇の、その字幕を追っていたのでストーリー展開を理解しながら集中して観るのとはまた違ったものを求められる作品に感じました。
同じ部屋が何回も出てきていながら毎回同じ画角で変化に乏しかったり、個人的な問題ですが登場人物の見分けがつき辛く、キャラクターも多いので今誰が喋っているのかがわからなかったりしたことも、体感時間を3時間以上に感じてしまった要因に思います。
また、キャラクター同士の会話の内容も、作品内で起きた出来事についての話もありましたが、基本的に村民みんなおそらく作品外の時間も暖炉の前で話をしていて、絞り出した話題やその場の思いつきで言葉を発していたように見え、鑑賞している人に伝えるセリフというよりは本当にひたすら会話をしていたなという印象が強めに残りました。
今作はサメットを中心とした村の様子を映し出すモキュメンタリーのように感じていましたが、終盤で突然挿入された謎の場面により、もしかしてサメットを演じたデニズ・ジェリオウルが『二つの季節しかない村』の世界に迷い込んだ様を映したドキュメンタリーでもあるのかと思いました。
他の意図もあったのかもしれませんが、あの場面にはサメットが迷い込んだ夢の世界をわかりやすく可視化する意図があったのかも。
英題は原題に近い意味の『About Dry Grasses』、「枯れ草について」。
厳しい冬を越えてもすぐに夏が来て草も枯れてしまう、だから冬を越えた苦労も水の泡となってしまう、それが人生、そうサメットは生徒に対して心の中で教訓のように伝えていましたが、個人的に願わくば枯れ草や元気のない鳥ではなく、冬を越えてようやく鳴くことができる虫たちのように、寒くても外で遊んでいた生徒たちには困難を乗り越えた先でサメットとはまた違う人生についての解釈に至ってほしいですね。