ASHITAKAAkino

落下の解剖学のASHITAKAAkinoのネタバレレビュー・内容・結末

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます


もう傷ついてる

それならスティーブン・キングは連続殺人鬼か?


2024年映画18本目

観客に結末を委ねる法廷劇。
でもこれがアカデミーノミネートか、という意外さも。国際的ながらも家族問題の普遍的な部分を取り扱っているからなのかと想像。結局は親に振り回される息子の話のようにも思えたので。

作家の書く私生活の切り売り、ハラスメント、国際結婚、言語、夫婦間の問題、家事やタスクの役割分担、回収されない台詞の仄めかしなどはかなり計算されていて◎。これまでの現代のステレオタイプな男女の役割の反転、浮気を責められて咄嗟に一回と言うこの嫌な感じが面白い。

小説とかなら普通に面白いと思うかもだけど、本作、撮影はかなりおざなりというか退屈。だから見どころは脚本と帰着点、それから役者の演技なのかなと。とりわけザンドラヒュラーが突出的という感じに。でも個人的に演技のうまさはそこまで重要視しているわけでもないのと、ゴシップ的なカメラ(やや『Succession』を意識してそうなクローズアップと移動)、検察側?の小説からの引用の提示(ラッパーのリリックが証拠になるようなもの)、設定上の馴れ初め(教える立場の男性に夢中になる女性生徒。美化してるが大学教授が手を出しているというパターン)、性的指向をも利用する、など。なかなかに露悪的なところが悪い意味で気になった。夫婦の問題を描いているという点では『Mr and Mrs Smith』とも通じるが、こちらのゴシップ的な性質は品がないようにも感じられた。また『Saltburn』のゴージャスな露悪性とも異なるのは、ルックの差だけとも言い切れない。挑発の矛先か。

脚本は確かに優れており、想像する余白をちゃんと残している。それどころか、どちらの側に立てば良いのだろうか、という子どもが感じるであろう絶妙な揺れを観客に体験させる。昨今の考察解説ブームにもよくハマる。ボーダーコリーのスヌープがかわいい。アスピリンのシーンは演技のようで安心。面白い、けど撮影は退屈だと思うから寝る人もいるのかも。
ASHITAKAAkino

ASHITAKAAkino