竜どん

落下の解剖学の竜どんのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.3
想像してたのと全然違った。
タイトルからは科学的&解剖学的&物理学的謎解きミステリーを連想させるが蓋を開けたら淡々延々法廷劇。『CSI』や『科捜研の女』期待すると肩透かしを喰らう。
しかも検察側被告側双方共に掲げる根拠が状況証拠ばかりで物的証拠が皆無の感情論なので、第三者目線ではどちらに肩入れもできずそれらしいミスリードも無い。まぁ有罪無罪は置いといて被告人の葛藤•懊悩の生々しさを知ることのできる傍聴人目線はリアルかも。

「疑わしきは罰せず」「推定無罪」が法治国家の原則であり客観的物証の無い断罪は危険視されて然るべきなのは前提として、それを傘に絶対的クロでありながら刑を免れている人間がいるのもまた現実。本作に於けるラストも証言者の家族への感情が別ベクトルを向いていたら逆の判決もあり得た訳で、どちらにしてもモヤッと感が残る印象。

人の「思い」は法をも乗り越えるという様な御涙頂戴がテーマだとするならエンタメとしてはいまひとつだが、現行法制度の脆弱さへのアンチテーゼとするならある意味アリか?

「ただ終わっただけ」
裁判など人の一生の一部分でしかない。
これからも続く人生の中でこの台詞は重い。


追記
仏の司法制度には明るくありませんが、仏参審制に於いて有罪とするには裁判官3名参審員9名の内8の有罪選択が必要の様ですね(重罪裁判の場合)。有罪7無罪5だった可能性もある訳だ。
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