マカ坊

落下の解剖学のマカ坊のレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.2
なんか最近「物語」についての作品多くない?笑

いや単に自分の興味がそこに引っ張られているだけか…。

本当に色んな切り口で語る事ができる作品なので、他の人のレビューを読むのが楽しい。多様な興味の方向と受け取り方。そういう意味でどこか心理テストのような作品かも。

気になるトピックてんこ盛りの中で、個人的には結局「作家の業」について考えてしまった。

同業夫婦で経済格差有りはやっぱしんどいよなー…。経済格差というか才能格差?いや、この手の「作家」が食えるかどうかは所謂才能以外の乱数の影響も大きいやろうから一概に言えんけど、ビジネスとプライベートが余りにもシームレスに繋がってるとかなり苦しいのではないか…。

監督曰く今作のミステリーとしての「真実」は明確にあるらしい。もちろん今作の主題としてのキモはそこには無いのだけど、しっかりと観客の興味をそこに惹きつけるべく全体が構成されてるのも含めて巧みだなと。あとフランスの裁判のノリが、見慣れない人間からするととても感興だった。「ホットな弁護士」含め配役も良かった。各キャラクターの「性別の割り当て」も嫌味なほど的確。

作中で、ある人物がはっきりと「作家」に成る瞬間がキャプチャーされていて、個人的にはそこがまさに今作のハイライトのひとつだったが、ここで凡人の私はなぜかフェイブルマンズを連想した。割と最初から「優れた」作家だったスピルバーグが自らの才能と業に向き合う事は何というか必然的で、「天才も大変やな」ぐらいの距離感で許容できるのだけれども、今作で「作家」に成る人物は、実質本人も望まない形で「作家」に成る事を選ばされており、これがフィクション映画であるとはいえ、そこから現実世界にも数多いるだろう「否応なき作家達」の事を想像して、どうにもいたたまれなくなった。

とにかく子供がしんどい思いをしない世の中に…。
マカ坊

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