Thecla

落下の解剖学のTheclaのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
-
面白かった〜〜けど腑に落ちねえ〜〜
自分が映画に、ひいては物語、関係性、正義といったものに何を求めているかの裏返しのモヤりな気がして、「映画と現実は違う」って自分に言い聞かせてジリジリしながら観た…

腑に落ちないというのも何か違う、全てが決定的でないことに対するフラストレーションが凄いのだが、人間の関係性や記憶なんてそんなものだし、最低の瞬間だけ切り取ってものを言うのはやっぱり違うよなと思いつつも、何かあれ!全てを納得させるたったひとつの真実があれ!!と思わずにいられなくて

これは映画の展開が退屈とか結末に納得できないとかそういうことではなくて、私たちはあまりに、はっきりとした答えや曖昧さのない真実を求めすぎなのかも知れないと思い知る良い機会になったなという話でした
そんなはっきりしてないもん人生、そりゃそうだよ

そしてその曖昧さによって首の皮が繋がる者も、永遠の罰を受くる者もいるんだろうという
全てはそのくらい何の保証もないまま揺れ動きながら進んでいて、結果というのはいつだって0でも100でもない
全ての事件の背後にはこの裁判があることを忘れないようにしようと思った

口論のシーンは苦しかったがそうだよな、そうだよなあ…と全てにどこか聞き覚えのある誰かの言葉が含まれているような気持ちになった
少しずつ揺らいできたサンドラへの印象があのシーンを契機にちょっと擁護するには手に余るか…? となるのもそうだし、あの最悪のタイミングで挿入したのは本当によかった

誰を擁護するかって最初に決めてかかるべきじゃないはずなんだけど、人間ってね。そうしがちだよね。ほんでこんな苦虫噛むような気持ちになるんだ 本当に忘れたくないな
Thecla

Thecla