Thecla

アメリカン・フィクションのTheclaのレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
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「白人が欲しいのは真実じゃなくて免罪符」
これはグサっときたなあ…

非常に面白かったです!
『ブラック・クランズマン』のように皮肉一辺倒でグイグイ進んでいく感じかと思っていたら、ありふれた家族の問題や優しい人たちのあたたかい挿話があったりして、品の良さが快かった。

にしても出版社の人間や映画プロデューサー? とのやり取りは笑うしかなかった
結局は弱者に寄り添う姿勢を示すための都合の良い材料が欲しいだけなんだなと
笑っている場合でなく本当にこういう人間たちが頂点に立って芸術やエンタメを回しているんだと思うと気が滅入るが、そこに少なからず迎合することで自らの個人的な社会(主人公の場合は自分の暮らしや母親の介護費)を保とうとするのも決して悪ではないよなと思いながら後味は苦い。

個人的には主人公の兄の存在が、作品の中でピーキーではあるが核心にも迫るという気もしていて、
というのも彼が母や主人公やかつての父との間に抱えるものは彼自身が黒人であることとは何の関係もないもので、普遍的に起こりうる家族間の不和であり、
実際には白人だろうが黒人だろうが、マイノリティだの親の介護だの離婚や親権だの仕事がうまくいかないだのはどこにだってある普通のことで、
そんな中で黒人だけが「黒人の暮らしはこう」と現代においても未だ先入観を持ち続けられていること、それらを扱った小説がヒットするという本作の取り上げるナンセンスさはやっぱり笑うしかないんだけど、やっぱり悲しい。
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