Yukaringo

落下の解剖学のYukaringoのネタバレレビュー・内容・結末

落下の解剖学(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

流石、2024年アカデミー賞脚本賞の作品。内容が深くて面白かった。

夫の落下死で容疑をかけられる妻の裁判が行われるが、目撃者の居ない。裁判の重要な鍵となるのは、目に障害のある息子だった。

私には、子供はいない。

だから、自分がこの妻、母の立場に立った時、同じ態度が取れるかはわからない。ただ、もし自分だったら、息子に無実を信じて欲しくてもっと必死になってしまうと思う。
「私は、殺してない」と。

容疑をかけられた母は、息子の考えを決して否定しない。自分がその日あった事をそのまま話せば良いという態度なのだ。
途中で、夫婦間での確執があったのではないかと、妻にとっては不利になる夫婦喧嘩の録音テープが裁判で提出される。そこで、息子は自分の母に対して、嫌悪感を抱いてしまい、もしかして母が殺したのではないかと疑い始めてしまうのだ。それでも、母は息子を責めたり、信じて貰うために必死にはならない。ただ、一緒に生活したいと求めるだけなのだ。

また、この映画の主人公の家族は、ドイツ人妻とフランス人の夫で、家庭は英語という複雑性もある。私も、国際結婚をしてるので、言葉のコミュニケーションが複雑な内容になればなるほど、不安な気持ちとなる事がわかる。

最終的には、どれを真実と決めるかという問題になる。

息子は、真実は分からないという答えを持っていたのだと思う。だからこそ、どれを真実として何を証言するのかを、心揺れながらも決めたのだと思う。裁判が進み、この夫婦間の錯綜する感情が露わになるたびに母の知らない部分を知る事となる辛さと、これを聞いて自分が両親の事を改めて考えるという成長も見れる作品だ。
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