MotelCalifornia

枯れ葉のMotelCaliforniaのレビュー・感想・評価

枯れ葉(2023年製作の映画)
3.9
最近、2時間半越えの大作ばかり見てたので、上質な小品を愉しみたいな、と思ってチョイス。考えてみたら、カウリスマキの作品を映画館で観るのは初めてだった。結果、見に来てよかったと思った。

しばしば、ラジオから流れてくるウクライナ情勢を伝えるニュースで、これは現代の話なんだと思い出すが、映画の語り口も登場人物の慎ましい生活も、昭和30年代の日本映画を思い起こさせる。

労働者階級のおじさんとおばさんのボーイミーツガール(?)ものなんだけど、今どき電話番号交換をしたメモを失くしてしまって会いたいのに連絡取れないとか、なんとも昭和的でよい。恋愛映画においては、すれ違いこそがドラマを生むよね。

主人公たちがしばしば通うカラオケバーの雰囲気もとてもいい。フィンランド歌謡みたいなのを情感たっぷりに歌い上げる人もいれば、いい感じのチャカポコしたシンセポップを軽く歌う女の子2人組がいたりして。

再び出会ってからは、すぐに二人は合わないということが露呈してしまうんだけど、淡々とエピソードを重ねながら、かわいい犬も登場したりするうちにふいに映画は終わる。

劇中のデートで上映されてたシャームッシュ(引用された作品はそうじゃないけど笑)作品にも通じる、何もなさが、今の自分の波長に心地よかった。全編を通じて、乾いてるけど色鮮やかな色調も素敵だった。
アクションも情報量もたっぷりなのとか、重厚な人間ドラマとかも好きだけど、たまにこういう映画を観るのっていいよね。
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