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枯れ葉のlektonのレビュー・感想・評価

枯れ葉(2023年製作の映画)
5.0
初期の「罪と罰」と構成や人物性格は似ているが、「相手の意志に全面的に従う愛」のあり方が、より双方向的に徹底していて、さらに不穏な世相と孤独を背景にすることで、「愛」の必要性が一層明確になっていた。これに、カウリスマキ得意とする、淡々とした肉体労働や貧しい日常生活のリアルな描写、そしてドラマに重要な歌曲が加わることで、現代の社会病を癒すべき「人と人とを結びつける愛」の主題が明らかになっていた。EU的価値に生きるカンヌが賞を与えねばならない気持ちになったのは容易に想像できる。戦争は憎しみを育てるが、愛はそれを凌駕する。犬の名前が、それを象徴してる。泣き叫ぶ反戦映画より遥かに訴える批判力をもつ作品だ。
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