ポレ

枯れ葉のポレのレビュー・感想・評価

枯れ葉(2023年製作の映画)
3.8
ジャック・ロンドンやアラン・シリトーらが描いた労働者階級の物語を、まさか2024年に現代劇とし映画館で観ることになるとは思わなかった。ラジオから流れるウクライナ戦争のニュースだけが、かろうじて現代と映画の世界を繋げている。時代から取り残された貧しき人々のペーソスとユーモアが印象に残る作品だった。

女は賞味期限切れの食品をカバンに忍ばせクビになり、男は業務中にウォッカをあおりクビになる。女は糊口をしのぐため鉄工所の工員の職を得て、ネコ車でコークス粉を運び、男の新たな職場では、くず鉄をコンテナへ一つずつ投げ入れる。彼らは生産性からも取り残されているのである。

そんな彼らも強くしたたかに生きている。クビを言い渡す経営者に対し連帯を示すし、カラオケパブに繰り出し楽しんでいる。アンサとホラッパはそこで出会った。恋愛過程はひたすらコメディーとして描かれる。ホラッパはトラム(路面電車)と接触する事故に巻き込まれるが、一瞬聞こえる女性の叫声だけで表現され、実に軽いタッチだ。深刻さを増すウクライナ侵攻のニュースに募る不安感と対比的である。

松葉杖の助けを借りて歩くホラッパ。愛犬チャップリンと前を向いてスタスタ歩くアンサ。必死に追いかける男。労働者のしなやかなたくましさをサラッと描き出し、アンサの尻に敷かれたホラッパを想像させる清々しいラストシーンだった。
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