ポレ

PERFECT DAYSのポレのネタバレレビュー・内容・結末

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

問答無用の名作。役所広司の演技があまりにも自然すぎて、平山という実在人物がフィクションの世界に紛れ込んだのではないか、そんな錯覚をしてしまう。

隠遁生活を送る平山は、目覚まし時計の助けを借りず、毎朝6時30分に目覚める。ふとんを上げて、盆栽に水やりをし、ルーティン通りに行動する。穿った見方かもしれないが、朝の音に敏感で、規律を重んじる生活は、受刑者だったことを彷彿とさせる。実家との隔絶は父親との軋轢だけが原因なのだろうか。

清掃会社へクレーム電話を入れて、怒りをあらわにする平山。寡黙で温和なイメージは虚構であり、本来の彼はもっと激しい性格であったことを示唆する。僕には大きな過ちを犯した過去があり、重い十字架を背負って生きている人物に思えてならなかった。

長回しのラストシーン。平山はしきりにハンドルを左右に切る。だが車窓は連動しない。唐突な現実感の喪失に戸惑う。釈然としないまま、涙をたたえ唇を震わせて微笑む平山が大写しになり終幕する。いったい何を暗示するのかうまく咀嚼できないが、非常に印象的だった。
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