カウリスマキさんによるかわいらしくも辛い恋愛映画。
現代の激動の中を生きる市井の人の苦しみとささやかな愛がカウリスマキさんの独特のユーモラスさとシュールさ満点で描かれた等身大の映画。
お話としては無限にありそうな内容なのだが、この等身大の雰囲気がなんとも愛おしい。あとはヘルシンキという街を描いた街の映画であると感じた。街の美しさ、渋さ、怖さ、ワルさ、粋さ、精神的な狭さ、空間的な狭さ、がそれぞれのキャラクターを通じて存分に感じることができたと思う。
ウクライナ戦争という圧倒的な悲劇、苦しみを背景に小さいが今後何十年も続くような貧困の中の苦しみの描かれ方がよい。自分は辛いけどもっと辛い話が世の中には流れている。そこから繋がる虚無的な感情は非常に共感できた。
2020年代現在の「空間」と「時間、時代」をそのまま切り取ったような映画。カウリスマキさんの他の作品も鑑賞したい。