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枯れ葉のmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

枯れ葉(2023年製作の映画)
3.9
2017年「希望のかなた」を発表後に監督引退宣言をしたアキ・カウリスマキが、6年ぶりに復帰。
つつましく生きる中年男女の恋の行方を絶妙に描いたラブストーリー。
カンヌ国際映画祭審査員賞受賞。
原題/Kuolleet lehdet
(2023、81分)

フィンランドの首都ヘルシンキ。
賞味期限の賞品を廃棄しなかったことをチクられ仕事を失ったアンサと、酒浸りの溶接工ホラッパは、カラオケバーで出会い、会話もしないのに惹かれ合う。
二人は街で偶然再会し、互いの名も知らぬままちょっとしたデートをするが、ホラッパは彼女がくれた電話番号を失くして連絡できなくなる…。

~登場人物~
・アンサ(アルマ・ポウスティ):ヒロイン。スーパーの職員を解雇される。
・リーサ(ヌップ・コイヴ):ヒロインの同僚で友だち。一緒にスーパーを辞める。
・ホラッパ(ユッシ・ヴァタネン):酒浸りの溶接工。仕事中の飲酒で解雇される。
・その友だち、フオタリ(ヤンネ・フーティアイネン):カラオケがうまい。
・トーニャ(アリーナ・トムニコフ):看護士。
・チャップリン(犬)。
・ラウニオ:カフェの店主。ドラッグの売人。
・姉妹シンセ・ポップ・デュオ、マウステテュット:ギター(アンナ・カルヤライネン)、ボーカル兼キーボード(カイサ・カルヤライネン)

・ジャームッシュの○○○映画(タイトルはお楽しみ)→
「名画だ。ブレッソンの『田舎司祭の日記』を思わせる。
ゴダールの『はなればなれに』だ」

「あなたは好きだけど、アル中は御免よ。
俺は指示が御免だ」

「男なんて同じ型の鋳物よ。しかも壊れてる。男はブタよ。
違うわ。ブタは賢くてやさしい。
言えてる。ブタに乾杯」

「彼の妹なの。信仰上のね」

ラジオで流れるロシアによるウクライナ侵攻のニュース、
抑制された穏やかな会話、
随所に使われる音楽(もちろん、エンド曲は名曲「枯葉」)
とぼけたユーモア、
6年経ってもアキ・カウリスマキ監督のスタイルは変わず、加えて円熟味を感じる。
映画「めぐり逢い」のデボラ・カーとケイリー・グラントのように名前を聞かないまま2人は逢う約束をしますが、予期せぬ不運と災難に見舞われます。
それでも、やっぱり最後はハッピーエンド。
失業しても人間としての尊厳を失わない中年労働者の恋の行方を温かく描いています。

~アキ・カウリスマキ監督 私のお勧め(製作年順ベスト3)~
①マッチ工場の少女
②浮き雲
③枯葉
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