山本周五郎の「赤ひげ診療譚」を黒澤明が映画化(後半の一部はドストエフスキーの「虐げられた人びと」がベース)。
江戸時代に「赤ひげ」と呼ばれた医師と見習い医師の交流を通してヒューマニズムを描く。
撮影は中井朝一と斎藤孝雄。
音楽は佐藤勝。
三船敏郎がヴェネチア国際映画祭男優賞受賞。
(1965、3時間6分、モノクロ)
江戸時代末期。
長崎でオランダ医学を学んだ保本(加山雄三)は、幕府が設立した小石川養生所で住み込みの見習いとして働くことになった。
江戸に帰れば幕府の御番医の席が与えられると思っていたのに、悪臭がする貧民養生所で働くことになり、保本は反感を覚える。
そこで、解雇されることを目論んで酒ばかり飲んでいたのだが、次第に赤ひげ(三船敏郎)の人間性に引かれていく…。
「病気の原因は社会の貧困と無知によるもので、これには治療法はない。現在我々にできることは貧困と無知に対する戦いだ。それによって医術の不足を補うほかはない」
~登場人物~
1️⃣小石川養生所
①主役1:所長、新出去定(にいできょじょう)「赤ひげ」(三船敏郎)
・医者、津川玄三(江原達怡)
・医者、森半太夫(土屋嘉男)
・賄のおばさん(七尾伶子、辻伊万里、野村昭子、三戸部スエ)
②主役2:新しい医者、保本登(加山雄三)
・父(笠智衆)
・母(田中絹代)
・かつての許嫁、ちぐさ(藤山陽子)
・ちぐさの妹、まさえ(内藤洋子)
・姉妹の父、天野源伯(三津田健)
・姉妹の母(風見章子)
2️⃣入居患者
①狂女(香川京子)
・奉公人、お杉(団令子)
・父、利兵衛(柳永二郎)
②蒔絵師、六助(藤原釜足)
・娘、おくに(根岸明美)
③車大工、佐八(山﨑努):むじな長屋の住人。
・恋人、おなか(桑野みゆき)
④岡場所の少女、おとよ(二木てるみ):12歳
・娼家「櫻屋」の女主人、きん(杉村春子)
・長次/こねずみ/ちょう坊(頭師頭師):7歳
・長次の母(菅井きん)
・長次の父(大久保正信):むじな長屋の住人。
3️⃣その他
・むじな長屋差配、五平次(東野英治郎)
・むじな長屋の住人、平吉(三井弘次):酔っぱらい。
・両替商、和泉屋徳兵衛(志村喬)
・松平家の家老(西村晃)
・松平壱岐守(千葉信男)
陰影をうまく使った芸術的ショットが何ヵ所かある。
幾つかのエピソードが登場するが、二木てるみが加山雄三や頭師佳孝と絡むお話が一番よい(涙腺がゆるむ~)。
黒澤流のヒューマニズムを詰め込んだ作品だが、「生きる」同様、作りすぎて興ざめな所も散見される。