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【REVIEW】
あえて残虐な部分を映さないというコンセプト勝ちの1作。「アウシュヴィッツ郊外でドイツ人がこうやって過ごしてる」という前提があれば、青空も談笑も小さな悩みも、すへんてが胸糞悪くなる。すごい発想だ…。
主人公らの会話や生活は、あえて退屈に作られている。構図は見事に切り抜かれているとはいえ、カメラにも基本的に動きがない。気を抜けば眠たくすらなってしまいそうな、静かで単調な映像と会話が続く。
しかし、今作には把握しておくべき前提がある。彼らは大量の人々が命を奪われた強制収容所の隣で過ごしているのだ。
美しいプールの向こう側で、空に広がる不穏な煙。関心を持たなければ環境音として聞き逃してしまう絶妙な音量の銃声や怒鳴り声。それらをすべて1時間45分集中して拾い続けるためには、淡々とした映像に向かって身を乗り出して、自ら映画に飛び込み続けなければならない。観客は、表面的な映像を呑気に受け取るのではなく、自ら考えることを求められる。
それは現代においても変わらない。ニュースでもSNSでも、海・国境の向こう側で悲惨な命の奪い合いが起きていることが報じられている。壁の向こう側で命が消えていっても呑気に贅沢暮らしを楽しむ一家に怒りや苛立ちを覚える時、その批判的な目はまさに「ブーメラン」として我々に飛んでくる。
観終わってまず頭を離れなかったのはミカ・レヴィによる音楽。どんなホラー映画サントラより怖い。
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観た回数:2回
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【星つけた際の"個人的"評価・好み】
※作品のウリじゃなさそうな部分、判断しにくい部分は「-」
総合点96pt/100pt 星換算★★★★☆4.8
95=スタンディングオベーション/90=大拍手/80=最高!/70=すごい!/60=良い/50=不足なし/40=あと一歩欲しい/30=うーん/20=さすがにちょっと/10=Z級
《配点》
好み(個人的なただの好み・印象の強さ)
98★★★★★
監督(コンセプト・元ネタ・主題・固有演出)
97★★★★★
脚本(設定・起承転結・言葉・脚本のテンポ)
98★★★★★
撮影(構図・カメラワーク・撮影での映像美)
94★★★★★
演技(演技力・役作り・演技のインパクト)
90★★★★☆
編集(カット・編集でのテンポ・音ハメ)
95★★★★★
音響(録音・音響)
100★★★★★
音楽(サントラ・歌曲)
100★★★★★
美術(キャラデザ・衣装&メイク・セット)
94★★★★★
配役(キャスティング)
90★★★★★
VFX(VFXのクオリティ・VFXでの映像美)
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